手術

全身麻酔導入時の介助方法と看護のポイント

全身麻酔の導入

今回は麻酔の導入方法についてのテーマですが、初療搬入時や急変時の挿管方法の知識としても役立つ内容です

あくまでも基本的な流れの一例ですので、医師の指示のもと症例に応じた対応が必要です

Contents

麻酔の3大要素

  • 鎮静 
  • 鎮痛 
  • 筋弛緩 

麻酔は鎮静剤で意識を消失させて手術時の記憶をなくします

鎮痛で痛みをなくし筋弛緩で動かないようにし手術がしやすいようにすることを目的としています

急速導入の一例(一般的な導入方法)

予定手術の際によく使用される麻酔の導入方法です

純酸素投与

まずはマスクで純酸素を5分以上投与します

脱窒素ともいわれ、あらかじめ純酸素を流して麻酔回路内や肺胞内の窒素を洗い出します

窒素は空気中に約80%存在するので、窒素で吸入麻酔薬が希釈されないようにするためです

また十分に酸素化することにより、挿管困難な場合でも低酸素になりにくいので落ち着いて対応できます

看護のポイント

この時点では酸素を吸っているだけなので、まだ眠くならないことを伝えてあげましょう

鎮静薬投与

末梢ルートより指示された鎮静薬を投与します

プロポフォール(ディプリバン)という白色の薬剤がよく使用されます

逆血を確認してから投与し、点滴ルート内に薬剤がなくなるまで点滴を滴下します

声かけやによる反応や消耗反射が消失(まつ毛を刺激しても瞬きしない)したことを確認し、

胸郭のうごきが観察できるように掛け物を外し胸を露出します

このとき発赤などの皮膚症状の観察なども忘れずにしましょう

意識が消失すると下顎を挙上し、マスク換気に切り替わります

しっかり換気できているか、胸郭の動きやSPO2やETCO2モニターを確認します

看護のポイント

プロポフォールは血管痛があるので、「点滴の刺入部がピリピリ痛みますが大丈夫ですよ」と声をかけましょう(結構痛いです)

また眠くなってきたらそのまま眠ってくださいねなどと声をかけましょう

筋弛緩薬投与

マスク換気ができていれば筋弛緩薬(ロクロニウムなど)を投与します

筋弛緩薬投与後は1~2分で効果が出現します

気管挿管

挿管時は枕を高くして首を後屈させるスニッフィングポジションをとります

臭いをかぐような姿勢のことです

挿管困難が予測される場合はMcGRATH(マックグラス)などのデバイスを準備しておきましょう

挿管困難が予測される症例

  • マランパチ分類で3以上
  • 開口制限
  • 頸部の運動制限
  • あごが小さい場合なども挿管やマスク換気が困難ですので術前にチェックします

挿管準備物品

  • 挿管チューブ(サイズや種類は麻酔科医に確認しておきます)
  • スタイレット
  • カフ用の10mlシリンジ
  • ゼリー
  • 聴診器
  • バイドブロック
  • 固定用のテープや固定具
  • 吸引の準備

挿管時は麻酔科医の指示にしたがい、口角を指で広げたりBURP法を実施しましょう

BURP法は甲状軟骨を圧迫し、声門を見やすくする圧迫法です

麻酔科医が喉頭展開をしたときに声門が見えにくい場合に実施します

B backward 後方

U upward   上方

R rightward 右方

p pressure  圧迫

喉頭鏡で舌を左によけることで声門がみえにくくなるので、介助者は声門を右に寄せてあげると覚えればいいです

麻酔科医が右手をだせば挿管チューブを渡します

「抜いて」と言われたらスタイレットを抜きましょう

挿管チューブをさらに進めて「入れて」と言われればシリンジでカフを膨らませます

挿管チューブが呼気で曇れば気管内に入っています

麻酔器回路のマスクを外して回路を接続し徒手換気します

聴診器で呼吸音の左右差がないかなど聴診し、問題なければ固定します

看護のポイント

食道挿管だった場合、SPO2は時間が経ってから低下する傾向にあります

挿管確認時はETCO2の波形が出ているか、胸郭が動いているかを確認するようにしましょう

吸入麻酔薬で鎮静を維持する

セボフルランを流し鎮静を維持します

鎮痛薬の投与

レミフェンタニル(アルチバ)などで鎮痛の維持をします

レミフェンタニルは効果も半減期も早いので麻酔の導入と維持でのみ使用されます

迅速導入(緊急時やフルストマック時の導入方法)

迅速導入はマスク換気を行わずにいきなり気管挿管する方法です

フルストマック時は胃内容物の逆流による誤嚥を予防するための介助を行います

マスクで陽圧換気をすると肺だけでなく、胃にも空気が送られてしまい嘔吐しやすくなるからです

フルストマック症例

胃内容物が貯留している

妊婦

高度の肥満

イレウスなどの通過障害がある場合

迅速導入の流れ

酸素マスクで十分に酸素化します

鎮静薬投与後にすぐに筋弛緩薬を投与し挿管します

フルストマックの場合は嘔吐による誤嚥を予防するため、セリック法を用いて挿管します

セリック法は輪状軟骨(喉ぼとけの下)を押さえて食道をぺちゃんこにして嘔吐しにくくする方法です

輪状軟骨は名前のとおり全周性に軟骨があるため、圧迫することで食道を閉塞してくれます

ポイント

必ず鎮静剤で眠らせてから筋弛緩です

順番を間違えると意識があるのに息ができなくなるので注意しましょう

緩徐導入(小児などルートキープが困難な症例)

マスクを当てセボフルランで鎮静後にルートキープし静脈麻酔後に挿管します

セボフルランはツンとした特有の臭いがあります

理解できる状態であれば説明してあげましょう

マスク換気が必要なのでフルストマック症例の場合は禁忌です

まとめ

麻酔の導入時は予期せぬ事態が起こりやすい場面でもあります

自施設での気道管理困難対応(DAM)カートの場所や中身を確認しておきましょう

普段から気道管理困難対応 のシュミレーション学習をしたり、デバイスの取り扱いに慣れていることが大切です

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