手術

エネルギーデバイスの基本と看護師が注意すべきポイント

電気メスの画像

エネルギーデバイスの基本は電気メスです

電気メスの原理を応用してさまざまなエネルギーデバイスが開発されてきました

電気メスにはモノポーラ(単極式)とバイポーラ(双極式)の2種類があります

モノポーラの先端のブレードはアクティブ電極といい、切開と凝固の両方ができます

バイポーラはピンセットの形をしているのでつまんで凝固しますが、基本的に切開はできません

Contents

電気メスの原理

電気メスは先端が熱くなって組織を焼くのではなく、電気メスの先端から電流を流した時に生体内で生じるジュール熱を利用しています

ジュール熱は抵抗に電流をながした時に生じる電気抵抗によって発生する熱のことです

切開モードと凝固モードについて

電気メスのハンドピースはメス先に近いほうが切開モード(黄色)メス先端から遠いほうが凝固(青色)です

フットスイッチの場合は左が切開ペダル(黄色)右が凝固ペダル(青色)です

操作パネルの数値ですが指定のない場合は切開と凝固ともに30Wで設定することが多いです

切開と凝固について

人間の細胞はほとんどが水分で出来ています

細胞を瞬間的に100℃まで熱すると瞬時に沸騰して蒸気になり、気化(蒸散)して切開されます

また細胞を60℃に熱するとこり、組織は乾燥して血液凝固がおきます

体に電流を流しても感電しない理由

電気が1秒間にプラスとマイナスに入れ替わる回数を周波数といいます

一般家庭で使用している電気の周波数は、50~60ヘルツの低周波です

低周波治療器などはビリビリ感じますよね

人間のからだは周波数が高くなるにつれて電気を感じにくくなります

電気メスは30万~500万ヘルツの高周波であるため感電しにくいと言われています

モノポーラについて

モノポーラは先端の電極から電流を流して、対極板で電流を回収し本体に戻しています

つまりモノポーラと対極板はピッチャーとキャッチャーのような関係です

モノポーラ使用時の注意点

  • ペースメーカーやICD(埋め込み型除細動)などを装着中の患者さんでは電気メスを使用できない場合があるので注意しましょう
  • 貴金属など着用している場合は安全のため外しておきましょう
  • 電気メスの煙はウイルスや細菌が含まれています。有害なので排煙装置を使用するなどし、極力吸わないようにしましょう
  • モノポーラ先端の電極にスパークといって火花が散ることがあるので、アルコールや剥離スプレーなどの使用は控えましょう
  • 患者さんの踵と踵の接触や指先と脇腹などが接触していると、対極板で回収するはずの電気のながれが変わり接触部位の熱傷のリスクがあります。クッションやタオルを挟むなど接触しないようにしましょう。

対極板を貼るときの注意点

対極板が剝がれると一部に熱が集まり熱傷をおこす可能性があります

手術部位などにもよりますが、大腿部や腹部、上腕部などが推奨されています

電気メス使用時のインシデントでは対極板に関連した熱傷事故が圧倒的に多いです

  • 対極板はできるたけ術野に近く、対極板の長辺側が術野に向くように貼りましょう
  • 刺青や瘢痕のある部位や骨突出してゴツゴツしている部位はさけましょう
  • 対極板を貼っている部位に液体がかかったり、血液や洗浄水がかからないようにしましょう
  • 毛深い部位では剃毛してから貼りましょう

最近の電気メスの器械は対極板がうまく貼れていない場合にアラームが鳴り、モノポーラが使用できないように設定されています

手術が始まり覆布がかかると確認が困難なので、しっかり貼るようにしましょう

機械出しの注意点

モノポーラを使用しないときはホルダーやポケットに収納するようにしましょう

モノポーラ使用中は近くにガーゼなど燃えやすいものを置かないようにしましょう

モノポーラのコードは屈曲させると電気抵抗が増すので、屈曲しないように固定しましょう

モノポーラの先端に炭化した組織などが付着していると切開や凝固能が低下しますので常にきれいにしましょう

バイポーラについて

バイポーラ

バイポーラはピンセット(鑷子)の先端に一対の電極があり、電極間で電流が流れるだけなので対極板は不要です

ピンセットの先端がどちらもピッチャーとキャッチャーの役割を担っています

モノポーラに比べると安全性が高いです

バイポーラ鑷子はさまざまな形状のものがありますので、使用前に確認しましょう

ON・OFFはフットスイッチを使用します

脳外科や手など神経が集中している部位を扱う手術に使用されます

バイポーラ使用時の注意点

バイポーラ先端のコーティング(絶縁部分)が剥がれていないか使用前に確認するようにしましょう

その他のバイポーラ

マリスバイポーラ

脳外科の手術の時に使用するバイポーラです

イリゲーションシステムにより、鑷子の先端から水(生理食塩水)を流しながら凝固できます

専用のルートを専用の器械とバイポーラに接続する必要があります

バイクランプ( ERBE社VIO )

切離したい組織をバイクランプで把持し、サーモヒュージョンします

サーモヒュージョンとは特殊なバイポーラ出力モードを落ちいて、組織を収束的に熱融合させて凝固する機能です

AMCO ERBE BiClamp カタログより

フットスイッチで操作します

基本的に凝固(シール)する機能なので、凝固後はメッツェンで切離します

ハンドピースは50回リユースで使用できるのでまだ使用頻度は高めです

ベッセルシーリングシステム

リガシュア(COVIDIEN社) エンシール(ETHICON社)

バイポーラ機能を利用して、径7mmまでの血管や組織束、リンパ管をシールし先端の内部に内蔵されたブレードにより切離します

シールが完了すれば音で知らせてくれます

ポイント

手術中は血管を糸で結紮して切離するという操作が繰り返し何度も行われます

ベッセルシーリングシステムを使用すればワンモーションで血管や組織などの止血と切離を同時にしてくれるので

結果、手術時間が短縮され、体内に残す糸を減らせます

超音波スカルペルについて

ハーモニック( ETHICON )

ハーモニックのしくみ

ハーモニックの器械本体で発生した高周波電気エネルギーをハンドピース(持ち手部分)で超音波振動に変換させます

超音波振動を利用して血管や組織の凝固と切開を同時に行うことが出来ます

超音波振動により物理的に組織を切開します

切開によって生じた摩擦熱によりたんぱく質が変性し、コアギュラムという粘着性の物質になり微細血管をシールして止血します

7mmまでの血管に使用できます

メリットとしては電気メスと比べて比較的低温で組織に作用するので、組織のダメージが少なく創傷の治癒が早いといわれています

ハーモニック使用後は先端が熱くなるので、濡れガーゼで冷ますようにしましょう

体の中に電流を流さないので対極板は不要です

まとめ

今回紹介した以外でもボール電極や潅流機能付きの電極、内視鏡で使用するものなど様々なデバイスがあります

使用している器械の原理が超音波なのか高周波なのかそれ以外なのか考えてみてください

高周波といえば電気です、電気であればモノポーラかバイポーラか(電極が1つか2つか)見た目で分かります

どの機種が採用されているかは施設で違いますがしくみや原理を理解していれば対極板がいるのかで悩む必要もなくなります

日々なにげに使用するのではなく、一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか

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